カシオペヤ座
このカシオペヤ座の画像は、
8年ほど前の夏に倶多楽湖で撮影しました。
この湖は、風のない夜は星々が湖面に写るなど、
星景撮影に良い場所なのですが、湖畔に至る車道には、
飛び出してくるシカの数が年々増えているうえ、
今年はクマの出没情報があり、なかなか撮影に行けません。
▲倶多楽湖の湖面に映えるカシオペヤ座(撮影:2015年7月10日21時39分 白老町倶多楽湖)
今回紹介するカシオペヤ座は、
北極星の周りをほぼ一日かけて回っており、
北海道からは1年中見ることができます。
毎日同じ位置に見えるのではなく、日々少しずつ見える位置が変わります。
空低く見えるときには、この画像のようなW字形に、
空高く見えるときはさかさまになり、M字形に見えます。
観察しやすい時間帯を午後8時から9時頃とすると
W字形に見えるのは夏の時期、空高くM字形に見えるのは冬、
そして春と秋はそれぞれ縦に傾いたように見えます。
夏のカシオペヤ座は、この画像のように北東の空低く見えるため、
地上の風景を入れての撮影がしやすく、山々の上、
空高く輝くカシオペヤ座を撮影するなら秋から冬にかけてが理想的です。
2等星3個と3等星2個で形作られるカシオペヤ座のW字形の星の並びは、
誰の目にもとまりやすく、かなり古くから世界各国で注目され、
そして親しまれてきました。
この星座の歴史を遡ると今から5000年以上も昔と言われていますし、
もちろんプトレマイオスが定めた48星座の一つに数えられています。
日本では、カシオペヤ座がW字型に見えることから『錨星』、
M字に見えるかたちが由来の『山形星』などと呼ばれていたようです。
ギリシア神話では、カシオペヤは古代エチオピア王ケフェウスの妻で、
アンドロメダ姫の母として登場します。
物語はカシオペヤが、自分や娘が海の妖精たちよりも
美しいと自慢し過ぎたため、海の神々の怒りを買い、
アンドロメダ姫をお化けクジラの生け贄に
差し出さざるを得なくなってしまいます。
アンドロメダ姫は天馬ペガススに乗ったペルセウス王子に
危機一髪のところで救われ、後に二人は結ばれますが、
トラブルを招いたカシオペヤ王妃は椅子に縛り付けられ、
今でも休むことなく北の空を回り続けているという逸話が残されています。
この神話には、秋の星座が多く登場することから、
1年中観察できるカシオペヤ座が、秋の星座として
紹介されることが多いのだと思います。
かつて北海道と本州を結ぶ寝台特急列車『カシオペア』が走っていたため、
この星座の表現に迷う方がいらっしゃいますが、
星座の名称としては『カシオペヤ座』で統一されています。
カシオペヤ座は北の方角を示す北極星をさがすときの目印として使われます。
当館のプラネタリウムは、3月から8月まではおおぐま座の北斗七星を、
9月から2月まではカシオペヤ座を使った北極星の見つけ方を
わかりやすく解説していますのでどうぞお越しください。
※室蘭民報 2023年9月3日掲載
やぎ座と土星
やぎ座

※室蘭民報 2021年9月26日掲載
みずがめ座
10月も中旬になると、午後5時前には日が沈んでしまいます。
暗くなるにしたがい星が見え始めますが、
さて、今の時期の一番星はなんだと思いますか?
10月6日に地球に大接近した火星が東の空に、
南の空には木星が輝いています。
この2つの惑星は、明るさがほぼ同じに見えているので、
「火星または木星」が今の時期の一番星になります。
▲みずがめ座(撮影:2020年9月19日19時55分 室蘭市母恋南町)
今回紹介するみずがめ座は、3等星以下の星ばかりで、
明るい星の少ない秋の星座の中でも、
特に形をたどりにくい星座の一つに数えられます。
みずがめ座は、2世紀の天文学者・プトレマイオスが定めた
48星座に数えられる歴史ある星座です。
原名は『アクアリウス』。『水を持つ男』や『水を運ぶ男』の意味で、
星座絵には水がめをかたむけ、水を流している少年の姿が描かれています。
さらに、その水がめからこぼれた水が、
点々と曲がりくねってみなみのうお座まで流れ、
魚がその水を飲んでいるように描かれています。
みなみのうお座の口に位置するフォーマルハウトは、
その名のとおり『魚の口』というアラビア語が由来で、
秋の星座の中でたった一つの1等星です。
みずがめ座のα星はサダルメリク、そしてβ星はサダルスウド。
この2つの3等星が少年の両肩に位置しています。
サダルメリクの左に見える逆Y字型、または三ツ矢の形に並ぶ
4つの4等星がこの星座の目印で、これさえ見つけられると、
みずがめ座の全体を想像しやすくなります。
目立たない星座のためか、日本に伝わるみずがめ座の
正確な和名はないとされています。
私がみずがめ座を撮影するときは、
まず、秋の四辺形とも言われるペガスス座をさがします。
その四辺形の右側2つの星を線で結び、その線にそって
まっすぐ視線を落としていくと、みなみのうお座の
フォーマルハウトが見つかります。
そのみなみのうお座とペガスス座の間付近に、
広角レンズを向けるとみずがめ座を写すことができます。
今年の秋は、火星と木星が輝いているので、
その2つの惑星の間をさがすと見つけやすいと思います。
※室蘭民報 2020年10月18日掲載
変光星ミラが極大
秋も終わりに近づいてきました。
晩秋の南の空には、星座で4番目に大きいくじら座が
横たわっているように見えます。
▲くじら座(撮影: 2019年10月23日午後7時39分 登別市栄町)
くじら座で一番明るい星は、β星の2等星『ディフダ』です。
この星はかつて『デネブ・カイトス』の名で呼ばれていました。
デネブ・カイトスとはアラビア語で「くじらのしっぽ」が語源といわれ、
文字どおりクジラの尾のあたりに輝いています。
その後、このβ星の名称は、2016年の国際天文学連合で
『ディフダ』(アラビア語で2匹目のカエル)と正式に決定されたため、
最近の天文雑誌や書籍ではこのディフダが使われています。
クジラの胸のあたりには、明るさが大きく変わる
変光星として有名な『ミラ』が姿を見せています。
『ミラ』(ラテン語の「ふしぎなもの」の意)は、
平均すると332日ほどの周期で、
2等級から10等級くらいまで明るさが変化します。
ミラは直径が太陽の520倍もある赤色超巨星ですが、
表面温度は太陽の3分の1の2000度くらいしかないとされていますが、
なぜこのミラの明るさが変わるのでしょう?
それについて国立天文台は、一生の終りに近い段階のこの星が、
膨張と収縮を繰り返す不安定な状態にあるためで、
膨張すると星の温度が下がって暗くなり、
収縮すると温度が上がって明るくなる、と解説しています。
もっとも暗くなることを『極小』、
もっとも明るくなることを『極大』と呼びますが、
そのミラの極大が近づいてきました。
極大の時期を、理科年表は11月17日、
天文年鑑は、11月19日と予想しています。
ミラは、変光の周期も極大時の明るさもばらつきがあり、
極大日や明るさの等級の予想がむずかしい変光星とされているため、
10日程度のずれはあり得ます。
また、明るさも必ずしも2等級に達するとは限りませんが、
この画像を撮影した10月下旬で、くじら座のα星で
3等星のメンカルとほぼ同じくらいの明るさになっているので、
今後はさらに明るくなることが予想されます。
では、ミラを見つけるにはどの星を目印にするといいのでしょう?
まず秋の星々を探す目印として使われる、
秋の四辺形の東側の2つの星を線で結び、
その線を南側に下ろすとディフダが見つかります。
また、くじら座の東側にはおうし座の1等星
『アルデバラン』が輝いています。
この2つの星のほぼ真ん中に輝く赤い星がミラです。
ミラを見たことがない、という方が多いと思います。
というのも、ミラは1年の半分以上は肉眼では見えないうえ、
仮に光度が上がったとしても、4月から6月ごろにかけては、
太陽に近い時期なので見ることはできません。
ということで、今月はミラを観察するには絶好の時期です。
これから12月にかけて、1週間おきくらいに観察しながら、
ミラの明るさが変わる様子を楽しんでみましょう。
※室蘭民報 2019年11月10日掲載予定