うさぎ座
今年の干支はうさぎですが、
冬の夜空でうさぎが見られるのをご存じでしょうか?
それは今回紹介する冬の星座・うさぎ座です。
▲冬の大三角とうさぎ座(撮影:2020.01.26 18:34 登別市札内町)
うさぎ座は、一番明るい星が3等星で、
星座自体も小さく、あまり目立たない星座ですが、
図のように線で結んでみるとうさぎが右を向いて
座っているような姿に見えてきます。
うさぎ座のすぐ上には、1等星が2個、2等星が5個もあり
『冬の星座の王者』と言われるオリオン座があり、
東隣には恒星で一番明るいシリウスが輝く
おおいぬ座があるためいっそう地味に感じます。
小さな星座なのであまり有名ではありませんが、
近藤二郎著『星座の起源』(誠文堂新光社 2021年)で、
プトレマイオス朝(紀元前305~30年)時代に製作された
『デンデラの天体図』には、「オリオン座の三つ星の
下に描かれている雄鶏の姿が現在のうさぎ座に相当する」と、
紹介していますので、古くは紀元前から
この星座の存在は知られていたようです。
ですから、2世紀にプトレマイオスが定めた48星座には、
当然リストに載ってくる歴史ある星座です。
ギリシア神話との結びつきは薄く、星座の配置から、
狩人オリオンが猟犬(おおいぬ座とこいぬ座)を使って
捕まえようとしたウサギだとか、オリオンが踏みつけた
かわいそうなウサギなどとされることがあります。
ウサギ自体は可愛い動物なのですが
いまひとつその良さを伝える話が出てきません。
プラネタリウム解説者の大先輩・河原郁夫さんは
『オリオン座のすぐ下にある星座で、
4つの3等星が作るいびつな四辺形が目じるしになります。
この兎はギリシアの古代に、シチリア島に野兎が
はびこったので、天上の猟師(オリオン座)と
猟犬(おおいぬ座)のそばに、この兎を加えたようです』
(原文の通り)と、著作『新版・星空のはなし』
(地人書館 1993年)で解説しています。
うさぎ座を代表するα星は、3等星のアルネブです。
アラビア語の『うさぎ』に由来する、
うさぎ座で一番目立つ星です。
うさぎ座の見つけ方は、両耳の上にオリオン座の
1等星・リゲルが輝いているので、
南中したオリオン座の真下を探すのがわかりやすいですが、
別な探し方として、おおいぬ座の1等星・シリウスと
おおいぬ座のβ星を結んで先にのばしたところに、
うさぎ座のα星・アルネブを見つける、
という方法もあります。
※室蘭民報 2023年1月22日掲載
昇る三つ星
深い部分月食とすばる
うさぎ座
立春が過ぎて、暦の上では春になっていますが、
夜空は冬の星座が見ごろを迎えています。
冬の星座でよく知られているのがオリオン座です。
『三つ星』と呼ばれる3つの2等星がほぼ等間隔で並び、
その3つ星を囲むように、2つの1等星と2つの2等星が
四角形を作っており、この整った星の並びは、
冬の夜空でとても目立ちます。
▲オリオン座とうさぎ座(撮影:2014年12月15日午後8時55分 登別市札内町)
今回紹介するうさぎ座は、そのオリオン座の
すぐ南側にある小さな星の並びです。
一番明るい星は3等星と、オリオン座に比べると地味な印象ですが、
図のように線で結んでみると、うさぎが右側を向いて
座っているような姿に見えてきます。
こいぬ座やおおいぬ座よりも先に昇り、先に沈んでいくので
「犬に追いかけられているうさぎ」や「狩人・オリオンに踏まれているうさぎ」
などと表現されることもあるようです。
うさぎ座に関する神話はないとされていますが、
紀元前3世紀ごろの天文詩に載っているという説があり、
プトレマイオスが定めた48星座の一つに数えられる歴史ある星座です。
うさぎ座を代表するα星は3等星のアルネブです。
アラビア語で『うさぎ』を意味し、うさぎ座で一番目立つ星です。
うさぎ座には『うさぎ座R星』という、
天文ファンに注目されている星があります。
濃い赤い色をしていて、平均すると約430日の周期で
およそ6等から11等まで明るさを変えるミラ型変光星で、
肉眼ではなかなか見つけにくい星です。
この星を発見した19世紀のイギリスの天文学者・
ジョン・ハインドにちなんで
『ハインドのクリムゾン・スター(深紅の星)』と呼ばれています。
この画像は24ミリの広角レンズで撮影していますが、
パソコンの画面で拡大すると、このクリムゾン・スターが確認できます。
ちょうど明るい時期だったのかもしれません。
新聞の印刷では見にくいと思いますが、
深紅の星と呼ばれるだけあって、
オリオン座の1等星・ベテルギウスよりも濃い赤色をしています。
ある天文雑誌は、今月のクリムゾン・スターは、6~7等の明るさで、
3月以降少しずつ暗くなっていくと予想しているので、
双眼鏡や望遠鏡をお持ちの方はぜひ探してみてください。
2月中旬のうさぎ座は、午後8時ごろ南の空に見えています。
※室蘭民報 2021年2月14日掲載
こいぬ座
先週の20日から、二十四節気の『大寒』です。
一年中でもっとも寒い時期とされていますが、
夜空を見上げると冬の星座がたくさん輝いています。
全天21個の1等星のうち、室蘭から見える1等星は15個です。
そのうち、冬の星座に分類される1等星が7個もあるので、
「冬の夜空はにぎやか」と言われています。
▲こいぬ座と冬の大三角(撮影:2020年1月26日午後6時43分 登別市札内町)
その冬の星座のうち、オリオン座のベテルギウス、
おおいぬ座のシリウス、そしてこいぬ座のプロキオン。
この三つの1等星を結んでできる三角形は、
『冬の大三角』と呼ばれています。
ほかの星座や星を見つける目印となる星の三角形は、
春や夏にもありますが、冬の大三角は、
図のとおりほぼ正三角形で一番整って見えます。
三角形を形作る3つの星をすべて言える方は、
かなりの天文通だと思います。シリウスやベテルギウスを
知っている方は多いですが、
プロキオンまで当てられる方はなかなかいません。
今回紹介するこいぬ座は、冬の大三角の中では一番小さな星座です。
1等星のプロキオンと3等星のゴメイサの2つしか明るい星はありません。
小さい星座ですが、2世紀の天文学者・プトレマイオスが定めた
48星座に数えられる歴史ある星座です。
白く輝くこいぬ座の1等星プロキオンの明るさはおよそ0.4等です。
ギリシャ語の『犬の前に』が語源とされ、
おおいぬ座のシリウスの少し前に東の空に昇ることから、
この名がついたと言われています。
地球からの距離はおよそ11光年と、明るい恒星の中では
シリウスとともに地球に比較的近い星です。
明るさは太陽の約6倍で、直径は太陽の2倍を超えると言われ、
表面温度はおよそ6500度と推定されています
3等星のゴメイサは、アラビア語で『うるむ目』や『涙ぐむもの』の意味で、
光の印象からそう名付けられたのではないかと言われています。
このプロキオン。日本では、
『シロボシ』という呼び名が各地に伝わっています。
これは青白く輝くシリウスをアオボシと呼ぶ地方が多いため、
アオボシに対してそう呼ばれていると思われます。
※室蘭民報 2021年1月24日掲載予定