カシオペヤ座
明日で8月が終わります。
このところ日が暮れるのがずいぶん早くなったと感じますが、
それもそのはず、今月1日の室蘭の日の入りは午後6時56分だったのが、
明日31日は午後6時12分と、一月で44分も早くなります。
9月になると日没の早まりはさらに進み、
月初めと月末の日没時間の差は約50分にもなります。
日の入り時間の変化は季節が進んでいることを感じさせてくれます。
▲カムイヌプリ上空で輝く秋の星座と並ぶカシオペヤ座(撮影: 2019年9月1日午後8時4分室蘭市香川町)
さて、東の夜空を見上げると秋の星座が登場しています。
秋の星座神話といえば、狂暴なおばけクジラへの
生けにえにされたヒロイン・アンドロメダ姫を、
羽の生えた天馬ペガススにまたがった英雄・ペルセウス王子が
危機一髪のところで救い出し、後に二人は夫婦になった
という物語が有名です。
今回紹介するカシオペヤ座は、神話ではケフェウス王の后で、
アンドロメダ姫の母親役で登場し、自分の(娘という説もある)
美しさを吹聴した挙げ句、他人を見下すような発言をしたことで、
国にさまざまな災難を招く、という『口は災いの元』の
戒めにも使われる、あまり良い役柄ではありません。
アンドロメダ姫がその後幸せに暮らしたのに比べ、
カシオペア王妃は、椅子に縛り付けられたまま天に上げられ、
海に沈んで休むことも許されず、
一晩に一度は逆さまにされるという、なんとも大変な役回りです。
これは、実際のカシオペヤ座が、北極星の周りをめぐる周極星で、
水平線に沈むことなく、北半球のほとんどの国で1年中見えることから、
この神話が作られたというのが定説になっています。
カシオペヤ座は、北極星をはさんでおおぐま座の
北斗七星の反対方向に見え、北極星を探す星座として、
春から夏にかけては北斗七星が、秋から冬にかけては
カシオペヤ座が使われます。
これは昔から主に航海術の基本だったようです。
2つの2等星と3つの3等星が『W』字型に並び、
北の空でよく目立ちます。
この星の並びは天高く昇ると逆さまになり『M』字型に見えます。
カシオペヤ座の星の並びは、日本では、
古くからW字型に見えるときは、船の錨の形に見立てて『錨星』、
M字型に見えるときは2つの山の形に見えることから、
『山形星』と呼んでいたと伝わっています。
※室蘭民報 2020年8月30日掲載
北極星と周極星
北の方角を教えてくれる星といえば、おなじみの北極星です。
北極星は季節が変わっても、時間がたっても、
ほぼ同じ位置に見えているので、昔から北半球に住む人々、
とりわけ船に乗る人や旅をする人にとってはとても大切な星でした。
▲羊蹄山と周極星(撮影:2019年4月12日午後8時30分~9時、洞爺湖町)
日本では、古くから『キタボシ』や『ヒトツボシ』をはじめ、
十二支の真北の方角を『子(ね)』ということから、
『ネノホシ』などさまざまな呼び名が伝わっています。
北極星はこぐま座の2等星ですが、国際天文学連合は、
2016年にこの星をこぐま座のα星として、
『ポラリス』(ラテン語で『極の』の意)という名に正式に決めました。
北極星は、天の北極にもっとも近い星を言います。
現在北極星は、正確には天の北極から約1度弱離れていますが、
地球の歳差運動(回転するものの回転軸がゆっくりと方向を変えていく運動)の影響で、
西暦2100年ごろには0.45度まで近づき、
その後は再び少しずつ離れていくと予想されています。
4,000年以降はケフェウス座の星が、
13,500年ごろには織姫星でおなじみの、
こと座の1等星・ベガが北極星の位置に
見えるようになると言われています。
さて、地球が1日に1回西から東に自転していることによって、
星々も動いて見えます。北半球の中緯度に位置する日本では、
天の赤道付近に見える星々は、東から昇り、南の空を通って西に沈み、
ほぼ1日経つとまた東から昇るように見えます。
これらの星々は『出没星(しゅつぼつせい)』と呼ばれています。
一方、北の空の星々は、天の北極を中心に、
反時計回りに円を描くように回っているように見えます。
この一晩中地平面下に沈まない星々を『周極星(しゅうきょくせい)』と呼んでいます。
この画像は、羊蹄山の真上に見える北極星を中心に
北の星々が回って見えるようすを、
およそ30分間続けて写した画像を合成したものです。
北極星から離れるにしたがって、
星の軌跡が長くなっているのがわかります。
たった30分でも、星はこれだけ動いて見えるのですね。
※室蘭民報 2020年4月5日掲載
北斗七星
春が近づいて日の入りが遅くなってきたのを感じます。
室蘭の元旦の日没は、午後4時14分でしたが、
今月末・29日の日没は午後5時25分と、
実際に1時間以上も日が長くなっています。
▲北東の空に直立したように見える北斗七星(撮影:2017年2月21日午後8時34分 登別市札内町)
日が沈んで北東の空を見上げると、7つの星の並びが見えます。
これが有名な北斗七星です。
北斗七星は星座の名前ではなく、おおぐま座の背中から
しっぽにかけて並ぶ星々です。
おおぐま座は、全天で3番目に大きな星座ですが、
北斗七星以外はあまり目立つ星がありません。
北斗七星は、日本では古くから、その名のとおり
『ナナツボシ』や、水などをくむ柄杓のような形に見えることから
『ヒシャクボシ』などと呼ばれていたようです。
柄杓の先端のα星・ドゥーベとβ星・メラクの2つの星は、
北極星を探す目印にも使われるので、指極星と呼ばれることがあります。
七つの星の真ん中のδ星・メグルスだけが少し光が弱く、3等星です。
ほかの6つの星はすべて2等星です。
2等星の数は、全天で67個とされていますが、
そのうち6個もこの北斗七星で輝いており、
春の宵の空に直立している姿はよく目立ちます。
北斗七星は、北極星を中心に大きな円を描いて、
ほぼ1日に1回ずつ回っています。
この画像には写っていませんが、
北斗七星の柄のカーブにそって線を延ばし、
春の星座・うしかい座の1等星アークトゥルス、
そしておとめ座の1等星スピカを結んでできる大きな曲線は、
『春の大曲線』と呼ばれています。
このことから、北天の星・北斗七星は1年中見ることができますが、
星座のガイドブックなどでは、春の星として紹介されることが多いです。
プラネタリウムのお客さんから、
北斗七星までの距離を聞かれたことがあります。
『天文年鑑』の2020年版によると、α星:120光年、β星:79光年、
γ星84光年、δ星81光年、ε星81光年、ζ星78光年、η星100光年と
地球からの距離はそれぞれ違います。
印象的な星の並びですが、一番近い星と遠い星とでは
およそ40光年以上も離れているのは驚きです。
また、北斗七星はこれまでも、『北斗』や『北斗星』など、
北海道を走る列車の愛称に使われていました。
現在札幌と函館間を走る特急スーパー北斗のヘッドマークには、
七つの星が描かれています。
※室蘭民報 2020年2月23日掲載
りゅう座
やまねこ座
一番明るい星は、山猫の後ろ足のあたりにある
やまねこ座の首星(α星)にあたる星で、これが唯一の3等星です。
ほかは4等星以下の暗い星ばかりで、なにしろ設定者の
ヘベリウス自身が「やまねこ座を探すには、山猫のような鋭い目が必要だ」
という言葉が伝えられているほど目立たない星座です。
また、新しい星座なので神話はありません。
付近にはしし座やかに座など春の星座が輝き、