いぶりの☆星空散歩 春の星座
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からす座

室蘭市内で星を撮影するにはどこがいいですか?と

質問されることがあります。

市街地からわずかな時間で行ける海岸がおすすめです。

絵鞆岬からマスイチ浜を経て、トッカリショに至る海岸線は、

昼間訪れると風光明媚な景色が楽しめ、夜はきれいな星空が見えます。


177-からす座その3110A1007

▲『おとめ座のスピカとからす座』(撮影:2019552017 室蘭市東町)



私がよく利用するのがこのからす座を撮影したイタンキ浜です。

昨年イタンキ浜付近に市場が移転してきましたが、

その市場の西側の駐車場がおすすめです。

周囲の街灯が少ないうえ、駐車スペースが広く、

対岸の恵山岬付近に気になる街明かりはありません。

恵山岬の東側は暗闇が広がり星を観察・撮影するのに良い場所です。


さて、今回は春の星座・からす座を紹介します。

北東の空に見える有名な北斗七星のカーブにそって、

うしかい座の1等星アークトゥルス、そしておとめ座の1等星スピカを結ぶ

雄大な曲線は『春の大曲線』と呼ばれています。

その曲線をさらに延ばした先、スピカのとなりに

4つの3等星による台形型の星の並びがからす座です。


からす座は、明るい星のない小さな星座ですが、

2世紀にプトレマイオスが定めた48星座の一つに数えられる歴史ある星座です。

この星の並びからカラスを連想することはむずかしいですが、

からす座に関するギリシア神話でその由来がわかります。


星図 (掲載用)からす座



プラネタリウム解説の大先輩で、かつて名古屋市科学館におられた

山田卓(やまだたかし)さんの著作に詳しいのでその抜粋を紹介します。


「伝説のカラス(コルブス)は、銀色の翼が美しい太陽神アポロンの

使い鳥だった。アポロンはコロニスという美しい娘を妻に迎え、

そのカラスを召使いとして彼女にあたえた。

留守にすることが多いアポロンは、時々カラスを呼びつけ、

愛するコロニスのようすを話させて心を休めた。


カラスは自分の話を興味深げに聞いてくれるのがうれしく、

はなしぶりは次第に面白おかしく脚色されるようになった。

コロニスは夫のいないさびしさから、いつしか若者イスキュスに

恋心を抱くようになった。当然このことは、カラスの口から

彼女の不始末物語として、いかにも一大事というふうに語られた。


コロニスに裏切られたことを知ったアポロンは、

怒りくるってコロニスとイスキュスを殺してしまう。

アポロンの怒りはこのいやな話を得意げに告げたカラスにもおよんだ。

カラスは美しい翼を真っ黒にされ、おまけに恐ろしいほどのしわがれ声にされ、

天にはりつけにされた。暗黒の夜空に黒いからだは見えないが、

カラスをささえる4本の銀の鋲だけがめだっている」。

『春の星座博物館』 地人書館 2005年 原文ママ)


なお日本では、からす座の4つの星がよく目立つことから、

シンプルに『四つ星』と呼ぶ地方が多く、

また、水平線の上にまるで船の帆のように見えることから、

『帆かけ星』という風流な呼び名も残っています。


 ※室蘭民報 2023年4月23日掲載

 


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春の大曲線

今年の春は気温の高い日が多いように感じます。

桜や梅などの花の見頃も、

例年よりずいぶんと早く過ぎました。


さて、春の夜空を見上げると、北斗七星が

天頂付近に横たわっているように見えています。

今回は、この北斗七星の柄の曲がりにそって、

春の1等星アークトゥルスとスピカを結んでできる曲線

『春の大曲線』を紹介します。



165-春の大曲線110A9256

 ▲春の大曲線(撮影: 2018417日午後754分 室蘭市香川町、対角魚眼レンズ使用)



北斗七星は、おおぐま座の背中からしっぽにかけて

輝く7つの星の並びで、北極星の周りを回り、

ほぼ一年中観察することができます。


この特徴ある星の並びは、古くから世界中で
多く描かれていますが、
『星座の起源』(近藤二郎著、誠文堂新光社 2021年)によると、「北天の星座『メスケティウ』は北斗七星を
表しているとされ、古代エジプト第一中間期
(紀元前2145年~2025年ころ)の木棺のふたに
描かれているのが現存する最古の資料」と紹介しています。
4千年以上前から描かれていたとは驚きです。

この北斗七星、日本では『七つ星』や『柄杓星(ひしゃくぼし)
などと呼ばれていたようです。

星図(掲載用)春の大曲線



うしかい座の1等星アークトゥルスは、
ギリシャ語の『クマの番人』という意味で、
いつもおおぐま座を追いかけているように見えるので、
この名がついたとされています。


このオレンジ色に輝く星は、
全天21個の1等星の中でも4番目、北天では
シリウスに次いで2番目に明るい星です。
日本では『麦星』や『五月雨星(さみだれぼし)
などと呼ばれていました。

スピカは、春の星座・おとめ座の1等星です。
おとめ座は、うみへび座に次いで2番目に大きな星座ですが、
スピカ以外は3等星以下とあまり目立つ星はありません。

スピカは、ラテン語の『麦の穂』を意味する
言葉から名づけられたと言われています。
古くから伝わる星座絵には、
麦の穂を持つ女神の姿が多く描かれています。


青白く輝くこの星を、日本では『真珠星(しんじゅぼし)』と
呼ぶのが定着しているようです。

夏至まであと1カ月を切り、日没が遅い時期になっています。
明るい惑星は夜明け前の東の空に集まっているので、
今の時期の一番星はアークトゥルスです。
北斗七星から、一番星・アークトゥルス、
そしてスピカを結んでできる雄大な春の大曲線を
ぜひ観察してみてください。

 ※室蘭民報 2022年5月26日掲載 

 

コップ座

春の星座『コップ座』は、コップという名がついているのに、

古くから伝わる星座絵には、

まるで優勝カップのような姿が描かれています。

不思議に思い調べてみました。


149-コップ座110A9948

▲春のイタンキ浜で撮影したコップ座(撮影:20193292031分室蘭市東町)

『星の名前のはじまり』(近藤二郎著・誠文堂新光社 2012年)は、

「コップ座の星の並びは、ガラスのコップではなく、

星座名のギリシア語『クラテール(Kratèr)』が示すように、

ワインと水を混ぜるギリシアの大甕・クラテールを表現しています。

α星は4等星で『アルケス(Alkes)』と呼ばれていますが、

アラビア語の『カップ』を意味する『アル=カース』に由来した名前です」

と解説しています。


一方、野尻抱影氏は「この星座は、ギリシアやローマのむかしから、

クラーテルという、酒や薬をまぜる、両耳と台のついた

鉢の形と見られていました。

日本でコップと訳したのは、あまりうまくありません

(『星座の話』野尻抱影著・偕成社 1977年改訂版、原文のママ)」と

日本語訳についても感想を述べています。


いずれにしてもコップ座は、2世紀の天文学者・プトレマイオスが

定めた48星座に数えられる歴史ある星座です。


コップ座が東の空から昇り始めるころは、

カップが真横に倒れているような姿ですが、

南の空にさしかかるころには、次第にカップの傾きも直り、

西の空ではほぼ水平になった形で沈みます


星図(掲載用)コップ座


明るい星の少ないコップ座を私が撮影する際は、

まず北東の空に7つの星の並び『北斗七星』を見つけます。

その北斗七星の柄の曲がりにそって、

うしかい座の1等星アークトゥルス、そして、

おとめ座の1等星スピカに至る大きな曲線は

『春の大曲線』と呼ばれています。


その春の大曲線の終点付近には、四辺形の星の並びが見えます。

その整った星の並びは『からす座』で、比較的見つけやすい星座です。

そのからす座に向かって右上にコップ座を見つけることができます。 


 ※室蘭民報紙 2021年4月4日掲載予定

 


からす座

6月21日の夏至が近づき、日一日と日没が遅くなっています。

今日6月7日の室蘭の日の入りは午後7時11分なので、

空が暗くなり、星々が観察できるのは

午後9時ごろになります。

135--からす座(シャドウ110A1015

▲からす座(撮影日時:201955日午後827分 室蘭市東町)


北東の夜空を見上げると、北斗七星が空高く昇っています。

その北斗七星の柄の曲りのカーブにそって視線をのばしていくと

オレンジ色に輝くうしかい座の一等星・アークトゥルス

さらにおとめ座の一等星・スピカが見つかります。

これを線で結ぶと大きな曲線になりますが、

この曲線は『春の大曲線』と呼ばれています。


その大曲線の終点スピカの西隣に

たてに長い台形のような星のならびが見つかります。

これが今回紹介する『からす座』です。


からす座は、さほど大きな星座ではありませんが、

4つの3等星が台形のように小さくまとまり、

明るさもそろっているので、春から夏のはじめにかけて、

南の空でよく目立つ星の集まりです。


この台形の上辺の2つの星を結び、左(東)へまっすぐのばしていくと、

青白く輝くおとめ座の1等星・スピカに届きます。


からす座は、2世紀にプトレマイオスが設定した

48星座に含まれる歴史ある星座で、神話も残されています。

神話のもっとも有名なエピソードは、もともとこのカラスは、

美しい銀色の羽根を持ち、人間の言葉を話す賢いカラスでした。

しかし太陽神・アポロンに重大なうそをついたため、

その罰として言葉を取り上げられたうえ、

真っ黒な姿に変えられて天にはりつけにされた、というものです。


星図(掲載用)からす座


からす座のアルファ星は、台形の右下にある4等星のアルキバです。

星座絵にはカラスのくちばしのあたりに描かれており、

からす座では5番目に明るい星ですが、大昔はこの星が

一番明るかったため、このように整理されたものと思われます。


日本では、台形型に輝く4つの星が目立っていたためか、

『ヨツボシ』という呼び名が広く各地に伝わっています。

また、船の帆に見立てた、『ホカケボシ』という

和名もよく知られています。


例年6月から7月にかけて、室蘭地方は肌寒い曇りの日が

多くなりますが、晴れた日は、南の夜空で台形のように星がならぶ、

からす座をさがしてみてください。



 ※室蘭民報 2020年6月7日(日)掲載予定


 

おとめ座

ふたたび学校や公共施設が休みになってしまいました。

長い間登校や外出ができないと気が滅入ることがありますが、

晴れた日には夜空を見上げ、

春の星座をさがして気分転換をしてみましょう。


134 おとめ座(香川シャドウ)AG1I3964

▲おとめ座(撮影:20194122019分 洞爺湖町香川)


星座は、今からおよそ5千年前の昔、

古代文明発祥の地と言われるメソポタミア地方で、

羊を飼って暮らしていたバビロニア人たちが、

夜ごと羊の番をしながら夜空の星々をながめ、

神や人や動物などの形を想像して、

星と星を結んだのがはじまりと言われています。


バビロニア人は、おもに農業に携わっていましたが、

見覚えのある星々が見えるようになると、

種まきや刈り入れの時期を知りました。

星々が季節とともに移り変わることを知っていたのです。


現在わたしたちが使っている星座は、

2世紀のギリシアの天文学者で数学者のプトレマイオス

(英語読みでトレミー)がまとめた、

いわゆる『トレミーの48星座』が基本になっていますが、

それらはバビロニアから引き継がれていたことが、

さまざまな出土品や後世の調査でわかっています。


星図(掲載用)おとめ座


今回紹介する春の星座・おとめ座は、

そのトレミーの48星座の一つに数えられる歴史ある星座です。

うみへび座に次いで全天で2番目に大きな星座ですが、

青白く輝く1等星のスピカ以外は明るい星が少なく、

全体の形をつかみにくい星座です。


星座絵では、背中に翼を持つ乙女が右手に羽ペン、

左手に麦の穂を持っていて、『穀物の穂先』を意味するスピカは、

麦の穂先に描かれています。


スピカは地球から約250光年離れているので、

今わたしたちが見ているこの星の光は

江戸時代に発したことになります。


スピカの日本の星名には、富山県に『アネサマボシ』などが

伝わっていますが、現代では、野尻抱影氏が和名として紹介した

『真珠星』がもっとも有名です。


このスピカと、うしかい座の1等星・アークトゥルス、

そしてしし座の2等星デネボラを結んでできる

三角形を『春の大三角』と呼び、ほかの春の星座や星を

さがす目印になっています。


この春の大三角の星々は、

街明かりのある自宅付近からも見つけることができます。



 ※室蘭民報 2020年4月26日掲載

 



 

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Author:kamokenyamafc
DENZAI環境科学館の天文ガイド

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