いぶりの☆星空散歩 夏の星座
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いて座

夏から秋にかけ、街明かりのない海辺や山へ行くと

天の川を見ることができます。

その天の川が色濃く見える地平線付近の代表的な星座といえば、

さそり座と今回紹介する『いて座』です。



180いて座_E9A7088

▲いて座の南斗六星(撮影:20166292125分 登別市カルルス町)


わたしたちは、その数が1千億個とも2千億個とも言われる

天の川銀河という巨大な星の大集団の中から星を眺めています。

地球から見ると、いて座付近が天の川銀河の中心方向にあたるので、

いて座の周辺はひときわ天の川が濃く、きれいに見えます。


 古くから伝わる星座絵には、大きなサソリに弓矢を向けているのが、

  上半身が人間、そして下半身が馬という

  『半人半馬(はんじんはんば)』の怪人です。

  神話では、この怪人は、ケンタウルス族の賢人ケイローンとされています。


『いて(射手)』とは弓を射る人のことですが、

ギリシア神話に登場するケイローンは弓の名手のうえ、

乱暴者が多いケンタウルス族の中でも博学で、

音楽や医学などさまざまな分野に優れた人として描かれています。


ケイローンの教え子の一人が、

近くに見えるへびつかい座のアスクレピオスです。

ギリシア神話に登場するアスクレピオスは、

ケイローンに医学を学び、どんな病人でも治すことができました。

その治療方法は、患者の病気の原因となる悪い箇所を

ヘビにかませたと伝えられています。

そのへびつかい座は、いて座とさそり座のすぐ上に見ることができます。


いて座のさがし方は、さそり座の赤く輝く1等星・アンタレスを見つけ、

視線を東側に移すというのが一般的ですが、

私は北斗七星のようにひしゃく形に並ぶ

6つの星を見つける方法をおすすめします。


星座絵(掲載用)いて座



南の空に見えるこの6つの星々は、

日本では『南斗六星(なんとろくせい)』と呼ばれていますが、

これは中国から伝来した呼び名です。

昔の中国では、北斗は死をつかさどる神様、

南斗は長寿の神様とされていました。

人間の寿命は、北斗と南斗の神様が相談して決めた

という言い伝えがあります。


英語圏ではビッグディッパー(大さじ)と呼ばれる北斗七星に対し、

南斗六星はミルクディッパー(牛乳さじ)と呼ばれます。

ミルキーウェイと呼ばれる天の川に見える

ミルクディッパーとはよくできた呼び名だと思います。


 いて座の星雲で有名なのはM20『三裂星雲(さんれつせいうん)』です。

 肉眼では見えませんが、現在当館のプラネタリウムで上映中の

 全天周映像番組『銀河の渚で』の中で、

 その美しい姿を見ることができます。

 どうぞご覧ください。


 私は撮影に臨むたび、直立する北斗七星の雄大な星の並びに春の訪れを、

 南の夜空に南斗六星を見つけると、北国の短い夏を思い、

 いずれも風情を感じます。

 その南斗六星は、ケイローンの上半身と弓の一部にあたります。

 大昔の人々のように、この星の並びから半人半馬の

 賢人・ケイローンの姿を想像してみてはいかがでしょう。


  ※室蘭民報 2023年8月6日掲載

 

 


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てんびん座

今年は春の訪れがとても早く、室蘭の桜は4月21日に開花しました。

これは平年の5月4日より13日も早いという、記録的な早さでした。

そのぶん桜の時期が終わるのも早く、

色鮮やかな新緑の時期もあっという間に終わろうとしています。

これも地球温暖化の影響なのでしょうか?


そんな地上の出来事とは関係なく、夜空を見上げると

いつもの年と同じように、春の星座を主役に

夏の星座も登場し始めています。


178-てんびん座110A2780さそり座(左下)とてんびん座(撮影:20216282048 室蘭市香川町)


今回紹介するのは夏の星座・てんびん座です。

星空観察のガイドブックによっては、春の星座に

分類することもありますが、初夏の南の夜空で、

春の星座・おとめ座と夏の星座・さそり座の間に見られます。


一番明るい星が3等星とあまり目立たない星座ですが、

3つの星がひらがなの『く』の字をさかさまにしたような

形に並んでいるのが特徴で、黄道12星座の一つに、

そしてトレミーの48星座に数えられる歴史ある星座です。


かつててんびん座は、さそり座の一部とされた時代がありました。

てんびん座のα星はズベン・エル・ゲヌビで、アラビア語で『南のつめ』。

β星はズベン・エス・カマリで同じく『北のつめ』、

そしてγ星はズベン・エル・ハクハクラビで同じく『サソリのつめ』で、

これらの呼び名はてんびん座がさそり座の一部だった名残のようです。


ではなぜさそり座の一部とされていたてんびん座が

独立した星座になったのでしょう?

現在おとめ座にある秋分点が、歳差運動の影響で古代には

てんびん座付近にあったとされています。

秋分のころは、昼と夜の長さが等しいことから、

その長さが釣り合う象徴として、

てんびん座を独立させたと考えられます。


星図(掲載用)てんびん座


また、一説には正義の女神が人間の善悪を計るツールとして、

このてんびんを使ったと伝えられています。


この正義の女神像は、日本の最高裁判所にも設置されており、

最高裁のホームページには「左手に天秤、右手に剣を持ったブロンズ像は、

ギリシャ神話の法の女神『テミス』をモデルとして作られた『正義』像です。

左手の天秤は『公平・平等』を、右手の剣は

『公平な裁判によって正義を実現するという強い意志』を表しています」

という解説が載っています。


てんびんとなった今では、α星がキファ・アウストラリス(南のかご)、

β星はキファ・ボレアリス(北のかご)という別名を持っています。

なお、このα星は実は2重星で、明るい星が2.8等星、暗い星が5.2等星で、

双眼鏡で見るとわかりやすく、

視力の良い人なら肉眼でも識別できるでしょう。


かつてはさそり座の一部とされていたてんびん座。

多くの方は夏の星座に分類するのが自然だと思うことでしょう。

これについてプラネタリウム解説の大先輩・山田卓氏は、

著書でビバルディの協奏曲『四季』の移り変わりにたとえ

『てんびん座は、春の星空が夏の星空に移り変わるときの、

ほんの短い休止符だ』(夏の星座博物館・地人書館 2005年)という

名解説を残されています。


 ※室蘭民報 2023年5月28日掲載

 


さそり座

夏休みが始まるころになると、

夏を代表する星座・さそり座が見つけやすくなります。

さそり座は、夏の南の空でアルファベットの

S字型のカーブを描くように並び、

下半分が天の川にかかるように見える星座です。

この画像では、さそりのしっぽのあたりが、

惜しくも室蘭の市街地を覆う霧の中に隠れています。


167さそり座110A2784

さそり座と天の川(撮影:2021年6月28日20時52分、室蘭市香川町) 


有毒生物として知られるサソリは、

しっぽの先に毒針を持っていますが、

神話のさそり座は、傲慢なふるまいのオリオンを

こらしめるために、天の神々が放った毒サソリで、

オリオンを成敗した功績をたたえて、

天に上げられ星座になったと伝えられています。


これは、さそり座とオリオン座が、

見かけ上およそ180度離れており、

さそり座が昇ってくるころに、

オリオン座が逃げるように沈むため、

この天文現象をもとに星座神話がつくられたのではないか、

と言われています。


日本では、しっぽのカーブを

大きな釣り針に見立てていたようで、

『魚釣り星』や『鯛釣り星』などの

呼び名が残されています。


さそり座のα(アルファ)星は、赤く輝く1等星のアンタレス。

ギリシア語で『火星に対抗するもの』と

いう意味の赤色超巨星です。

アンタレスが赤く見えるのは、表面温度が

約3,500度と低いため、と言われています。

日本では古くから『赤星(あかぼし)』などと呼ばれていました。


星図(掲載用)さそり座ver


さそり座の頭の部分に輝く2等星は、

δ(デルタ)星のジュバです。

このジュバは、2.3等から1.6等の範囲で、

不規則かつ急激に明るさが変わる変光星です。

この変光が起きる原因について国立天文台は、

高速で回転するジュバから放出されたガスが、

しばしばこの星の赤道周囲に円盤のようなものを作ることで、

光度が変化するのではないか、と推定しています。

このジュバが1.6等まで明るくなると、

さそり座の印象もやや違って見えます。


さて、アンタレスとよく比べられる火星は、

2年2カ月の周期で地球に接近します。

今回は12月1日に最接近するため、

これから少しずつ観察しやすくなります。

7月から8月にかけては、夜半過ぎから

夜明け前の東の空で見つけることができます。


 ※室蘭民報 2022年7月17日掲載

 

 

夏の大三角と北極星

星座をさがすのに便利な星の並びは、
四季それぞれにあります。
秋は四角形ですが、冬、春そして夏は三角形です。
今回はその一つ『夏の大三角』の紹介です。

166-夏の大三角ち北極星_E9A5752
▲夏の大三角(撮影:2016年5月27日21時40分 登別市札内町)

夏の大三角を形づくるのは3つの1等星です。
一番明るいのがこと座のベガ。
実視等級(見かけの明るさ)が0.03と1等星の中では5番目、
北天で見える1等星の中では3番目に明るい星です。
中国名は『織女星(しょくじょせい)』、日本では
『おりひめぼし』と呼ばれていました。

2番目に明るい星がわし座の1等星アルタイル
(実視等級:0.77)です。
天の川をはさんでベガの対岸に位置しています。
中国名は『牽牛星(けんぎゅうせい)』、
日本では『ひこぼし』と呼ばれていました。

この2つの星は七夕伝説の主役です。
星座伝説の多くはギリシア神話に由来していますが、
この七夕伝説は中国から伝わってきました。

三角形の3番目の星は、はくちょう座の1等星デネブ(
実視等級:1.25)で、天の川に羽を広げる
白鳥のしっぽに位置しています。
はくちょう座は、十字型に星が並んで見えることから
『北十字(きたじゅうじ)』とも呼ばれています。
この北十字はクリスマスの頃に直立して見え、
デネブはその十字の頂点に輝いています。

地球からこの3つの星までの距離は、
天文年鑑2022年版によると、ベガは25光年、
アルタイルは17光年、そしてデネブは
3200光年とされています。

デネブがはるか遠くにある星なのに1等星として見えるのは、
実は太陽の数万倍の明るさで輝く、
質量の大きな超巨星だからです。
3つの星の中で一番暗く見えるデネブですが、
実際はもっとも明るいのですね。

166-星図夏の大三角と北極星

この夏の大三角付近には、夏の星座がいくつか見えます。
三角形の中には『こぎつね座』や『や座』があり、
わし座のすぐそばには『いるか座』も見えます。
いずれも暗い星ばかりの目立たない星座ですが、
夏の大三角を目印にするとさがしやすいでしょう。

冬と春の大三角はほぼ正三角形に近い形をしていますが、
夏の大三角はたてに長い二等辺三角形のような形をしています。
ベガとデネブを結んだ線を軸として、
先端にあるアルタイルをつまんでひっくり返すようすると、
北極星付近にぶつかります。

北の方角の目印・北極星のさがし方は、
北斗七星やカシオペヤ座からたどるのが有名ですが、
これからの夏の時期には、夜空に見える夏の大三角から
北極星をさがしてみてはいかがでしょう。

 

 

 ※室蘭民報 2022年6月19日掲載

 

七夕の星と夏の大三角

151 七夕の星と夏の大三角110A2538

 ▲カムイヌプリ上空に昇る夏の大三角(撮影:20216132045分 室蘭市香川町)



今週の水曜日、7月7日は七夕です。

室蘭市青少年科学館があったころは、

七夕が近づくと、子どもたちに願いごとなどを書いた

短冊を笹の葉に飾ってもらい、

プラネタリウムでは、七夕にまつわる動画を投影するなど、

皆さんに七夕の雰囲気を味わってもらっていました。

七夕は、天の川の両岸で向かい合っている彦星と

織姫星の男女の星が、1年に一度だけ会える日、

とされています。

 

彦星は、わし座の1等星・アルタイル。

アルタイルは、アラビア語で『飛ぶワシ』という意味で、

両わきの3等星と4等星を一直線に結んで、

翼を広げて飛ぶ鷲をイメージして名付けられたようです。


織姫星は、こと座の1等星・ベガ。

北半球で見える1等星の中で3番目に明るい星です。

アラビア語で『落ちるワシ』という意味で、

まわりの星と結んだ星の並びを、

翼をたたんで下降するワシの姿をイメージしたようです。


このアラビア語の名前からわかるように、

今から数千年前の古代バビロニアでも、

ベガとアルタイルを一対の星と見ていたようです。


彦星と織姫星をへだてて流れる天の川には、

5つの星が大きな十字形に並んでいます。

昔の人々は白鳥が翼を広げて飛んでいる姿を

想像していたようで、はくちょう座と名付けられています。

十字の頭の位置に輝いているのは1等星のデネブ。

アラビア語で『尾』の意味をもつデネブは、

白鳥のしっぽに位置します。


星図(掲載用)七夕の星と夏の大三角


これら3つの星を結んでできる三角形は

『夏の大三角』と呼ばれています。

小学4年生の教科書に載っていて、

子どもたちが最初に学ぶ夜空の目印です。


さて、七夕の時期は、天気の悪い日が多いような気がしますが、

今年はどうでしょう?本州はちょうど梅雨の時期で、

室蘭も曇りや霧の日が多いですね。


もともと七夕は、日本で古くから行われていた行事と、
平安時代に中国から伝わった七夕伝説が結びついた、
と言われています。
江戸時代には五節句の一つ『七夕(しちせき)の節句』
と定められ、当時使われていた旧暦と呼ばれる
太陰太陽暦の7月7日に、星祭などが行われていました。

明治以降、節句は新暦で行われるようになってしまいましたが、
このところ国立天文台などが中心となり、
かつての七夕の日を星空に親しむ機会にしようと、
旧暦の7月7日に『伝統的七夕の日』として広報していて、
全国の天文台などで星空の観望会などが行われています。

このころになると梅雨も明け、晴天の日が多くなります。
ちなみに今年の伝統的七夕の日は8月14日です。
その夜、星空の観察をさまたげる月は午後10時前に沈みます。
おまけに数年ぶりに観察しやすいと予想される、
『ペルセウス座流星群』の極大の翌日にあたるので、
七夕の星だけでなく、いくつかの流れ星も見られそうです。

 

 
 ※室蘭民報 2021年7月4日掲載

 

プロフィール

kamokenyamafc

Author:kamokenyamafc
DENZAI環境科学館の天文ガイド

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