春の大曲線(2018)
この画像は、地面がゆがんで写っています。
対角魚眼レンズという特殊なレンズを使っているからです。
▲春の大曲線(撮影: 2018年4月17日午後7時54分 室蘭市香川町)
北斗七星の柄の曲りのカーブにそって線を延ばし、
うしかい座のアークトゥルスをへて、
おとめ座のスピカに至る曲線を『春の大曲線』と呼びますが、
その大きな曲線の全体を写すためにこのレンズを使いました。
北斗七星は、おおぐま座の背中から
しっぽにかけて輝く星の並びで、北極星の周りを回り、
ほぼ一年中観察することができます。
日本では『柄杓 星』などと呼ばれていたこの特徴ある星の並びは、
古くから世界中で多く描かれていますが、
19世紀の画家・ゴッホが1888年に描いたとされる
『ローヌ河畔の星空』がよく知られており、
インターネットで検索するとすぐに見つかります。
うしかい座の1等星アークトゥルスは『クマの番人』という意味で、
これはいつもおおぐま座のあとをついて回っているので、
この名がついたとされています。
このオレンジ色に輝く星は、全天21個の1等星の中でも4番目、
北天ではシリウスに次いで2番目に明るい星です。
日本では『麦星』や『五月雨星』などと呼ばれていました。
スピカは、春の星座・おとめ座の1等星です。
おとめ座は、うみへび座に次いで2番目に大きな星座ですが、
スピカ以外は3等星以下とあまり目立つ星はありません。
スピカはラテン語で『穀物の穂』や『麦の穂』を意味し、
青白く輝くこの星を、日本では『真珠星』と呼んでいた地方があった、
と野尻抱影氏が紹介しています。
天文に関する著作を多く残されている野尻氏は、
『星座の話』(1954年・偕成社刊)で、この春の大曲線について、
「5、6月ごろの星空にこの曲線をたどってみるのは
なかなか楽しいことです」と観察を勧めています。
皆さんも胆振地方の星空で、
この春の星を結んでできる雄大な曲線をさがしてみてください。
※室蘭民報 2018年5月13日掲載
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ポンプ座
ポンプ座は、春の夜に南の空低く見える星座で、
18世紀にフランスの天文学者・ラカイユが設定しました。
ラカイユは、それまで星座が設定されていなかった場所に、
北天と南天合わせて14の新しい星座を設定しましたが、
いずれも明るい星の少ない暗い星座ばかりで、
探しにくいので知られています。
▲ポンプ座(撮影: 2018年4月4日午後8時26分 室蘭市母恋南町)
このポンプ座も、例外ではなく、
もっとも明るい星が4等星と暗い星ばかりです。
また、星座のガイドブックなどでも紹介されないことが
多いマイナーな星座ですが、
20世紀の初めに国際天文学連合で定められた
全天88星座の一つです。
ポンプといえば、今の時代は水を汲み上げたり、
灯油を入れるなどさまざまなポンプがありますが、
ラカイユが描いたとされる古い星図には、
当時の科学実験に使われていた真空ポンプが描かれています。
ただ、この暗い星の並びから、その真空ポンプを
イメージするのはかなりむずかしそうです。
また、新しい星座なので神話はありません。
ポンプ座を見つけるには、おとめ座の1等星・スピカを見つけ、
その西には小さな四辺形に並ぶからす座が見えます。
そのからす座から視線をさらに西に向けると、
南の地平線近くに、淡い星々が三角のような形に並ぶ
ポンプ座が見つかります。
4月から5月にかけては、春の宵の南の空高く輝く
しし座の1等星・レグルスからほぼ真っすぐに
地平線方向に視線を落とすと、
ポンプ座が探せます。
春は空の透明度が低い日が多いですが、
ポンプ座をさがすには、地平線付近の透明度が
高い日を選んだほうが良さそうです。
※室蘭民報 2018年4月22日掲載