春の夫婦星
5月になり東から南の空にかけて
春の星座が勢ぞろいしています。
日が沈んで空が暗くなりはじめると、
南東の空には2つの明るい星が目立ちはじめます。
その2つの星は『春の夫婦星』と呼ばれる
アークトゥルスとスピカです。
▲春の夫婦星(撮影日時:2019年4月12日20時2分 洞爺湖町香川)
ややオレンジ色に見えるアークトゥルスは、
うしかい座の1等星。全天で4番目、
北天ではシリウスに次いで2番目に明るい星で、
春から夏を過ぎ秋になるまでよく目立つ星です。
ギリシャ語で『クマの番人』という意味で、
日本では、麦の刈入れのころに天頂高く輝くことから
『麦星』などと呼ばれていました。
野尻抱影氏は、延宝9年(1681年)に版行された
句集『次韻』の中に、『麦星』の文字を発見しています。
アークトゥルスの東側、空に向かってやや右下に見える
白く輝く星がおとめ座の1等星・スピカです。
スピカはラテン語で女神が左手に持つ
『小麦の穂』に由来すると言われています。
日本での伝承的な呼び名は定かではありませんが、
野尻抱影氏が和名とした『真珠星』が、
今ではすっかり定着しています。
スピカは1個の星のように見えますが、
実は表面温度が2万度もある2個の星どうしが、
4日の周期でめぐりあうという近接連星です。
このスピカまでの距離はおよそ275光年。
江戸時代の中ごろに発したスピカの輝きを、
今地球に住むわたしたちが見ていることになります。
ふつう『夫婦星』というと七夕の星・ベガとアルタイルを指します。
『春の夫婦星』という呼び名は、星座のガイドブックなどには
必ず載っているほど有名ですが、日本のどの地方で
呼び始めたのか由来はよくわかっていません。
2018年発行の『日本の星名事典』(北尾浩一著・原書房)には、
富山県でスピカを『アネサマボシ』、
アークトゥルスを『アンサマボシ』と呼ばれていたと伝わっており、
夏のベガとアルタイルに対し、
春の七夕を想像させてくれる、
と紹介しています。
※室蘭民報 2019年5月12日掲載
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