おうし座
今日から12月。いよいよ冬本番となり
これから寒さが厳しくなりますが、
夜空を見上げると冬の星座が輝いています。
冬の星座の先駆けとして、
すでに晩秋から東の空に登場していたのがおうし座です。
▲未明の西の空に沈むおうし座(撮影:2015年12月14日午前3時7分、登別市札内町)
おうし座には有名な星の集まりがあります。
日本では古くから『すばる』と呼ばれていたプレヤデス星団です。
この星の集まりは、およそ120個と言われる星からなる散開星団で、
肉眼でも6~7個の星を見ることができます。
おうし座のアルファ星は、赤く輝く1等星のアルデバランです。
星座絵には、アルデバランは牛の右目のあたりに描かれています。
アルデバランのそばには、『∨』字型に並ぶ星々が見えますが、
これも同じく散開星団のヒアデス星団です。
おうし座の隣で五角形に並んでいる星座は、
冬の星座・ぎょしゃ座ですが、その5つの星のうちの一つは、
おうし座のベータ星で2等星のエルナトです。
エルナトは牛の左の角の付近で輝いています。
おうし座は、5~6月の一時期を除いてほぼ1年中見えるので、
おうし座の2つの星団には、日本各地に
さまざまな呼び名が伝えられています。
時計やスマホのない時代には、時刻や季節を知る手段として、
漁や農耕の目安するなど、生活に深く関わっていたようです。
ヒアデス星団の並びは、ツリガネボシやカネツキボシなど、
お寺の鐘に見立てているのがよく知られています。
そしてすばることプレヤデス星団。
すばるで思い出されるのが、清少納言の『枕草子』の
有名な一節「星は、すばる、ひこぼし・・・」です。
これについて野尻抱影氏は、清少納言が参考にしたのは、
平安時代中期に源順(みなもとのしたごう)が編纂した
『倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)』ではないかとし、
『昴星(すばる)』という文字が書かれている
もっとも古い文献と紹介しています。
(『日本の星 星の方言集(中公文庫版 2005年)』)。
プレヤデス星団は、すばるのほか、スマル、ムツラボシなど
全国にさまざまな呼び名が伝わっています。
北海道に伝わる呼び名もたくさんあり、
スバル(古平町)、スバレ(神恵内村)、
ムヅラボシ(函館市、積丹町、泊村)、ムジナボシ(せたな町)、
ウズラボシ(八雲町熊石)などを挙げています。
アルデバランは、アラビア語で「あとに続くもの」の
意味と言われています。これは、アルデバランが
プレヤデス星団に続いて東の空に昇ってくるためで、
日本でも同じように「スバルのアトボシ」や
「ムズラのアトボシ」などの呼び名が伝わっています。
※室蘭民報 2019年12月1日掲載