北極星と周極星
北の方角を教えてくれる星といえば、おなじみの北極星です。
北極星は季節が変わっても、時間がたっても、
ほぼ同じ位置に見えているので、昔から北半球に住む人々、
とりわけ船に乗る人や旅をする人にとってはとても大切な星でした。
▲羊蹄山と周極星(撮影:2019年4月12日午後8時30分~9時、洞爺湖町)
日本では、古くから『キタボシ』や『ヒトツボシ』をはじめ、
十二支の真北の方角を『子(ね)』ということから、
『ネノホシ』などさまざまな呼び名が伝わっています。
北極星はこぐま座の2等星ですが、国際天文学連合は、
2016年にこの星をこぐま座のα星として、
『ポラリス』(ラテン語で『極の』の意)という名に正式に決めました。
北極星は、天の北極にもっとも近い星を言います。
現在北極星は、正確には天の北極から約1度弱離れていますが、
地球の歳差運動(回転するものの回転軸がゆっくりと方向を変えていく運動)の影響で、
西暦2100年ごろには0.45度まで近づき、
その後は再び少しずつ離れていくと予想されています。
4,000年以降はケフェウス座の星が、
13,500年ごろには織姫星でおなじみの、
こと座の1等星・ベガが北極星の位置に
見えるようになると言われています。
さて、地球が1日に1回西から東に自転していることによって、
星々も動いて見えます。北半球の中緯度に位置する日本では、
天の赤道付近に見える星々は、東から昇り、南の空を通って西に沈み、
ほぼ1日経つとまた東から昇るように見えます。
これらの星々は『出没星(しゅつぼつせい)』と呼ばれています。
一方、北の空の星々は、天の北極を中心に、
反時計回りに円を描くように回っているように見えます。
この一晩中地平面下に沈まない星々を『周極星(しゅうきょくせい)』と呼んでいます。
この画像は、羊蹄山の真上に見える北極星を中心に
北の星々が回って見えるようすを、
およそ30分間続けて写した画像を合成したものです。
北極星から離れるにしたがって、
星の軌跡が長くなっているのがわかります。
たった30分でも、星はこれだけ動いて見えるのですね。
※室蘭民報 2020年4月5日掲載
3月に見える星々
新型コロナウィルスの感染拡大予防のため、
休校や公共施設の臨時休館が続いています。
学校に行けないと友達にも会えないし、
科学館や図書館なども閉まっているので、
多少気が滅入ってしまうことがあるかも知れません。
そんなときには星空を見上げてみましょう。
今回は、街明かりのある自宅付近でも観察できる星々を紹介します。
▲夕空に輝く金星。今の時期は日没前後から午後9時過ぎまで観察することができます
(撮影は2020年2月11日17時41分 伊達市舟岡町)。
今の時期、日が暮れて最初に見える星は、太陽系の惑星・金星です。
明るい星・金星は、その名の通り、昔から『明星』と呼ばれ、
夕方の西の空に見えるときには『宵の明星』、
明け方に東の空に見えるときには
『明けの明星』などと呼ばれてきました。
金星は、3月28日には細い月に、また4月3日と4日には、
日本では『すばる』と呼ばれる、
おうし座のプレアデス星団に接近して見えるので、
とても美しい光景になりそうです。
▲冬の大三角。現在のベテルギウスは、この撮影時よりもやや明るくなっているように見えます
(撮影は2020年1月26日午後6時37分 登別市札内町)。
視線を西から南の空へ移してみましょう。
金星ほどではありませんが、明るい星が見つかります。
おおいぬ座の1等星シリウスです。
シリウスは恒星の中で一番明るい星です。
シリウスの上には『冬の大三角』を形づくる2つの星が見えます。
こいぬ座の1等星プロキオンとオリオン座の1等星ベテルギウスです。
ベテルギウスは、昨年秋ごろから暗くなっているので
話題になっていましたが、国立天文台によると、
最近少しずつ明るさを取り戻しているそうです。
星の一生の老年期に差しかかっているベテルギウスですが、
恒星の進化を研究する良い素材になっているようです。
北東の空には、水をくむ『柄杓』のような
星の並びの北斗七星が見えています。
北斗七星はおおぐま座の星で、
星座絵にはクマの背中からしっぽの部分に描かれています。
北斗七星の東側には、『?』マークを
裏返したような星の並びが見えます。
春の星座・しし座です。
しし座の星座絵にはライオンの姿が描かれていますが、
春の時期は、しし座とそのとなりに北斗七星が並んで見えるので、
古代の人々が想像したライオンとクマが並ぶ姿を、
星の並びに重ね合わせてみるのもいいかも知れません。
最初に紹介した金星は、5月下旬ごろから観察しにくくなり、
6月下旬には明けの明星として東の空に登場します。
そのころには、世界を騒がせている
新型コロナウィルスの感染も沈静化して、
平穏な日常がもどっていることを願っています。
※室蘭民報 2020年3月8日掲載予定