月食中の月とさそり座
▲皆既後、部分月食中の月とさそり座
5月26日の皆既月食は
さそり座付近で起きました。
北海道の胆振地方は時おり薄い雲がかかりましたが、
月出帯食から皆既食、そして前後の部分月食の
ほぼ全過程を観察することができました。
撮影日:2021.05.26 20:53 北海道登別市
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皆既月食 2021
室蘭市青少年科学館が3月に閉館したため、
市内にはプラネタリウムがない状態ですが、
今週、5月26日に『皆既月食』が起きるので紹介します。
この皆既月食は、今年一番とも言える天文現象で、
もしもプラネタリウムがあったなら、
プログラムの最優先で皆さんにお知らせしていました。
▲3年前の皆既月食中の満月(撮影:2018年1月31日21時57分 登別市札内町)
皆既月食とは、かんたんに言うと、この画像のように、
満月が一時的に赤黒っぽく見える現象です。
なぜそのように見えるかと言うと、
太陽によってできる地球の影の中に月が入るためです。
月食は、太陽・地球・月が一直線に並ぶ時、
つまり満月の時にだけ起きます。
ただし、太陽の見かけの通り道(黄道)に対し、
月の見かけの通り道(白道はくどう)が傾いているため、
ふだんの満月は、地球の影の北側や
南側にそれたところを通ります。
そのため、満月のたびに月食が起きるわけではありません。
今回室蘭で皆既月食を観察できるのは、
2018年1月以来3年4カ月ぶりのことです。
では、今回の皆既月食は室蘭でどのような
経過で見えるのでしょう。
地球の影には、『本影(太陽光がほぼさえぎられた濃い影)』と
『半影(本影を取り囲む薄い影)』に分けられます。
皆既月食が始まる前に、月はまず半影の中に入ります。
これを『半影食(はんえいしょく)』といい、
普通の月よりやや暗く見えますが、
半影は薄い影なので肉眼でははっきりとはわかりません。
『部分食(ぶぶんしょく)』が始まります。
肉眼でも変化がわかるので、ここからが観察のしどころです。
今回の部分食は18時45分ごろから始まりますが、
この日の室蘭の月の出は、その少しあとの18時52分なので、
月は少しだけ欠けた状態で昇ってきます。
これもめずらしい現象で『月出帯食(げつしゅつたいしょく)』
といいます。
そして月の欠けている部分が少しずつ広がり、
いよいよ月全体が本影の中に入ります。
『皆既食(かいきしょく)』の始まりです。
月は『赤銅色(しゃくどういろ)』と表現される、
赤黒っぽい色に見えることでしょう。
今回の皆既食は、20時09分ごろから始まり、
20時19分ごろに食の最大となり、20時28分ごろまで、
およそ19分間続きます。
その後月は本影から出てくるにしたがい、
赤銅色の部分が少しずつ少なくなり、
部分食が終わるのが21時53分ごろ、そして半影食が終わり、
いつもの満月に戻るのが22時51分ごろです。
この日の月は、今年一番大きく見える満月で、
最近は『スーパームーン』と表現されることが多くなっています。
この呼び方は天文用語ではありませんが、
その年に一番地球に近づく満月のときに、
皆既月食が起きるのはめずらしいことです。
今回の皆既月食は、夏の星座・さそり座付近で起きます。
ふつう満月の夜は、月明かりで周囲の星々が
見えにくくなりますが、皆既中は空が暗くなって
一時的に星が見やすくなります。
今回の皆既中には、赤銅色の月の下に、
さそり座の1等星・アンタレスが見られます。
アンタレスは赤い輝きが有名で、
皆既中の赤銅色の月と見比べるのもおもしろいと思います。
次回、皆既月食が見られるのは、2022年11月8日です。
また、今年の11月19日には部分月食が起きます。
そのときには、このコーナーをお借りして、
また皆さんに紹介したいと思います。
※室蘭民報 2021年5月23日掲載