からす座
室蘭市内で星を撮影するにはどこがいいですか?と
質問されることがあります。
市街地からわずかな時間で行ける海岸がおすすめです。
絵鞆岬からマスイチ浜を経て、トッカリショに至る海岸線は、
昼間訪れると風光明媚な景色が楽しめ、夜はきれいな星空が見えます。
▲『おとめ座のスピカとからす座』(撮影:2019年5月5日20:17 室蘭市東町)
私がよく利用するのがこのからす座を撮影したイタンキ浜です。
昨年イタンキ浜付近に市場が移転してきましたが、
その市場の西側の駐車場がおすすめです。
周囲の街灯が少ないうえ、駐車スペースが広く、
対岸の恵山岬付近に気になる街明かりはありません。
恵山岬の東側は暗闇が広がり星を観察・撮影するのに良い場所です。
さて、今回は春の星座・からす座を紹介します。
北東の空に見える有名な北斗七星のカーブにそって、
うしかい座の1等星アークトゥルス、そしておとめ座の1等星スピカを結ぶ
雄大な曲線は『春の大曲線』と呼ばれています。
その曲線をさらに延ばした先、スピカのとなりに
4つの3等星による台形型の星の並びがからす座です。
からす座は、明るい星のない小さな星座ですが、
2世紀にプトレマイオスが定めた48星座の一つに数えられる歴史ある星座です。
この星の並びからカラスを連想することはむずかしいですが、
からす座に関するギリシア神話でその由来がわかります。
プラネタリウム解説の大先輩で、かつて名古屋市科学館におられた
山田卓(やまだたかし)さんの著作に詳しいのでその抜粋を紹介します。
「伝説のカラス(コルブス)は、銀色の翼が美しい太陽神アポロンの
使い鳥だった。アポロンはコロニスという美しい娘を妻に迎え、
そのカラスを召使いとして彼女にあたえた。
留守にすることが多いアポロンは、時々カラスを呼びつけ、
愛するコロニスのようすを話させて心を休めた。
カラスは自分の話を興味深げに聞いてくれるのがうれしく、
はなしぶりは次第に面白おかしく脚色されるようになった。
コロニスは夫のいないさびしさから、いつしか若者イスキュスに
恋心を抱くようになった。当然このことは、カラスの口から
彼女の不始末物語として、いかにも一大事というふうに語られた。
コロニスに裏切られたことを知ったアポロンは、
怒りくるってコロニスとイスキュスを殺してしまう。
アポロンの怒りはこのいやな話を得意げに告げたカラスにもおよんだ。
カラスは美しい翼を真っ黒にされ、おまけに恐ろしいほどのしわがれ声にされ、
天にはりつけにされた。暗黒の夜空に黒いからだは見えないが、
カラスをささえる4本の銀の鋲だけがめだっている」。
(『春の星座博物館』 地人書館 2005年 原文ママ)
なお日本では、からす座の4つの星がよく目立つことから、
シンプルに『四つ星』と呼ぶ地方が多く、
また、水平線の上にまるで船の帆のように見えることから、
『帆かけ星』という風流な呼び名も残っています。
※室蘭民報 2023年4月23日掲載